森を守るマーク 森林認証制度FSC®について
2020/06/12
世界の森林資源の今
世界の森林面積は約40億6,000万ヘクタール、これは地球の陸地の面積の31%の広さを占めています。
しかし、5年ごとに発表される国連食糧農業機関(FAO)の報告書、「森林資源評価報告書2020」によれば、1990年以降、世界では4億2000万ヘクタールもの森林が、農地や植林地として利用するため、大規模に転換され、失われてきました。これは日本の11倍にも相当する広さです。直近の2015年から2020年の5年間の減少も、年間約1000万ヘクタール。これは日本の約1/4の面積に相当し、東京都と比較すれば45倍の大きさです。
このような森林の改変により、造成される農地や植林地などのプランテーションでは、木材や製紙用パルプ、天然ゴム、パーム油や大豆、牛肉などさまざまな物が生産されています。
そして、これらの産品が、日々の暮らしやビジネスに不可欠なものである反面、もとあった自然の森林生態系を大きく損なっているケースが多くあることも報告されています。
FSC森林認証制度とWWF
このように森林は、野生生物のすみかとして、気候変動を抑制する二酸化炭素の吸収源として、また暮らしやビジネスに必要なもの生み出す場所として重要な環境であるにも関わらず、今も深刻なスピードで減少し続けています。
その状況の中でWWFは、守るべき自然の森の減少を食い止める一方、生産のために必要な森林が、持続可能なかたちで適切に管理していくことが必要と考えます。
国際的な森林認証制度を運営するFSCは、このような保全と持続可能な利用に対する考えや市民の環境意識の高まりを背景に、1994年に正式に発足しました。
このFSCの森林認証制度は、世界中から参加する環境保全団体、先住民族や労働者の権利に取り組む団体、生産者や利用の立場にある民間企業など、環境・社会・経済の各分野のステークホルダー(利害関係者)の議論と合意によって運営され、また責任ある森林管理のための10の原則と70の基準を定めています。
WWFはこのFSCの発足を支援し、長年その取り組みの普及に努めてきましたが、現在では、FSCはWWFとは異なる完全に独立した組織として運営され、WWFは数多くのステークホルダーの1つ(国際会員)としてFSCに参加しています。
消費者として持続可能な利用を
国土の約2/3が森林に覆われる日本ですが、日本は多くの木材や紙を輸入、消費しており、人々の暮らしやビジネスは、海外の森林資源に大きく依存しています。
例えば、紙の生産量は、中国・米国についで世界第3位。国民一人当たりの消費量も年間201kgと世界平均56kgを大きく上回ります。
世界的な法規制の強化や製紙関連業界の取り組みにより、持続可能性に配慮した森林管理が推進される動きもある一方で、依然として、紙の原料となる植林木のプランテーション造成のために、大規模な自然林の植林地への転換が問題視される地域もあります。
木材利用については近年、国産材の利用が増え、自給率は約20年前に比べ36%と2倍近くなっています。
一方で、コンクリート型枠用合板のように、熱帯の国々から輸入された南洋材が、依然として大きなシェアを占める製品も少なくありません。
これらが原産地で、持続可能な形で生産されているかを確認することはとても大切です。
そうした手段の一つとして、人と自然が共生する社会の実現を目指すWWFは、FSCを普及する活動に力を入れています。
これまでに、世界でFSCの森林認証を得た森の面積は2億1000万ヘクタール、CoCの件数は4万2000件を超えるまでなりました。
また、日本国内の認証面積は 約41万ヘクタール、CoC件数は1500件を超え、国ごとのCoC件数では、アジアでは最多の中国の約9100件に次ぐ件数となっています(いずれも2020年5月時点)。
さらに近年は、深刻さを増す気候変動、持続可能性(サステナビリティ)、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境-Environment、社会-Social、企業統治-Governance)といった言葉が、以前にも増して大きな注目を集めるようになりました。
こうしたなかで、自然資源の適切な利用に関する生産者の意識、消費者の持続可能な製品を求める声は、かつてない高まりをみせ、2021年に開催予定の大規模な国際イベント、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の調達に向けてもその機運が高まっています。
それでも、実際にそうした製品の供給に大きく貢献し得るFSCに対する認知は、日本の消費者の間では、まだ十分に高いとは言えません。
特にFSCのような第三者認証制度の普及が早かった英国やドイツなどと比べれば、普及の余地が大きくあるといえます。
WWFは今後も、企業や行政などのステークホルダーと協働し、FSCの普及に努めてゆきます。
地球から、森がなくなってしまう前に。
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